バンコクでのミャンマー軍事クーデターに反対するデモ
=5月1日(ロイター)
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世界はロシアのウクライナ侵略に目を奪われているが、ミャンマー問題を忘れてはならない。
クーデターを起こした国軍が支配するミャンマーは、正常化への動きが少しも見られず、強権統治の既成事実化が進んでいる。
民主派勢力の一部は武装闘争に舵(かじ)を切り、加勢する少数民族武装勢力も含め、国軍との戦闘が激化している。
外資の引き揚げや通貨下落、ロシアのウクライナ侵略に伴う世界的な物価高で、ミャンマー経済は極度に悪化した。放置するわけにはいかない。
事態の打開には、全当事者による対話が必要だ。とりわけ、国民民主連盟(NLD)主体の民主政権の指導者で、今は国軍に拘束されているアウンサンスーチー氏の参加が欠かせない。
国軍は昨年2月のクーデターで実権を握り、街頭での平和的な抗議デモに対して、無差別の銃撃を含む徹底的な弾圧で応じた。
民主派勢力の一部と少数民族武装勢力の関係者は「国民統一政府」(NUG)を結成し、国軍打倒を掲げて武力闘争を始めた。
約20の少数民族武装勢力があり、以前から国軍と内戦状態にあった。民主派の若者がこれら武装勢力に訓練されている。
全当事者による対話の開始は、国軍のミンアウンフライン総司令官も出席した昨年4月の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議での合意事項の一つだ。
スーチー氏は最優先の当事者である。今年3月、ASEAN特使としてカンボジア副首相が訪問した際、国軍がスーチー氏やNLD幹部との面会を認めなかったのはおかしい。ASEANには強い態度を求めたい。
外貨不足に苦しむミャンマーは外貨を自国通貨のチャットに交換することを義務付け、企業や国民から不満の声が上がる。場当たり的対応では、経済的にも混乱は深まるばかりである。
米欧はミャンマーに制裁を科すが、国軍に武器を供与するロシアや中国は擁護に回っている。国軍がウクライナ侵略を「正当」とするのはあまりに醜い。
日本政府は国軍との「独自のパイプ」があるとして、ミャンマーへの対応で米欧とは一線を画してきた。そうであるならば、事態打開に向け、そろそろ成果を示してもらいたい。
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2022年5月21日付産経新聞【主張】を転載しています